…昔からよく考えていたことだ。
誰もが「自分の城」を持っている。
誰もが「自分の城」を築いている。
誰もが「自分の城」を築こうとしている。
「自分自身」という名の城を。
製鉄工房の昔馴染みは「自分の城」を打ち、精錬しようとしている。
最近武器屋になった元常連は「自分の城」を集め、砥ぎ出そうとしている。
近頃腕を上げてきた冒険者は「自分の城」を戦って、勝ち取ろうとしている。
酒場に入り浸る女戦士は「自分の城」を鍛え、磨き上げようとしている。
広場で名を知られる占い師は「自分の城」を読み、見定めようとしている。
教会を預かる神父は「自分の城」を慈しみ、祈ろうとしている。
王城を守る副隊長は「自分の城」を率い、誇ろうとしている。
俺は。
俺は「自分の城」をどうしようとしている?
…昔からよく考えていたことだ。
材料には不足はない。
工法も心得ている。
だが設計図が描けない。
それこそ、基盤にでも、飾りにでも、石垣にでも、内装にでも使えそうな
紅い石、蒼い石、白い石、黒い石
足元に転がっている。
それこそ、切る事も、繋ぐ事も、彫る事も、磨く事も出来そうな
道具はいくらでもある。
だが築くべき城が視えてこない。
自分だけの城を自分だけのやり方で。
だが一体俺はどうしたい?
…周りのやつらは言うだけだ。
『小さくて、守り易い、堅実な城を作れ』
余計なお世話だ。
俺の造りたいものはそんなものじゃねぇ。
脳裏を時折横切るあの城。
霧に埋もれ、未だ形の視えない城。
夕日の逆光に翳り、未だ輪郭の視えない城。
あの城だ。
だが。
浮かび上がりかけては、また影に沈む。
…まだ築くべき城は視えない。
俺は「自分の城」をどうしたい?
タッタッタッタッ!
ああ…、あの足音だ。
一番陽の当たる丘で、誰よりも大きな城を築こうとしているやつの。
「自分の城」を採取し、調合しようとしているやつの。
大小の石を丁寧に磨き上げ、積み上げて。
この国の誰にも予測出来ないような城を築き続けている。
「こんにちはー! …あれ?」
「……」
磨かれた石達は眩しく光を反射して、俺の目を射抜く。
…思わず溜息を吐きそうになるぜ。
「…どうしたの? 元気ないみたいよ?」
お前は自分がどれほどの城を築こうとしているのか、分かってねぇんだろうな。
全く…たいしたやつだよ。
「ああ。…まあ、昔から良く考えていた悩みだ…。気にするな。お前には一生分
からない悩みだろうからな。」
〜Ende〜
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LIEBRING様への投稿作2作目でした。こちらでも掲載することにしました。
…今、読み返すとこれもこっ恥ずかしいな…(汗)
そういや、夜中の3時にいきなり思いついたネタじゃなかったかな、これ。
夜中に文書くと、やはり酔ってんのか?みたいなのが出来るとみえる。